50代以降も強く鍛えられる — 落とすのは重量ではなくセッションの総量
要点
サルコペニアは30代から10年ごとに骨格筋量の3〜8%を奪う。これに対応する要点は重量を落とすことではなくセッションに上限を置くことで、45分またはワーキングセット12セットのうち先に来たほうで切る。さらに筋力とは別にパワーを鍛える必要がある。軽めの重量で下ろすときに2秒、挙げるときは1秒以内、3セット6回を週2回だ。タンパク質は1食あたり35〜40gを目標にする。
サルコペニアは30代から始まり、10年ごとに筋量の3〜8%を持っていく。50代に入るころにはすでに20年分が進んでいる。ただしこの数字が言っているのはトレーニングを減らせということではない。むしろ逆方向の圧力だ。
『Men's Health Muscle After 40』の著者 Bryan Krahn はこう整理する — 今やっていることを全部変える必要はなく、賢くやればいい。実際に変えるべき項目は思ったより少ない。
重量を落とすのか、セッションを削るのか
削るべきはセッションの総量だ。加齢で先に落ちるのは最大筋力ではなく、作業容量(ワークキャパシティ)と回復能力である。今日バーピーを1分多くやることは、明日のトレーニングを失う代償に見合わない。
だから上限を先に決めておく。1セッション45分、またはワーキングセット12セット。先に来たほうで切り、1セットも追加しない。強度は保ったまま総量にだけ蓋をする発想だ。
筋力とは別にパワーを鍛えるべきか
そうだ。筋研究者の Brad Schoenfeld は、サルコペニアに抗うには筋力だけでは足りずパワーが要ると見る。筋力が20kgを挙げられるかどうかなら、パワーは同じ20kgをどれだけ速く挙げられるかだ。階段でつまずいたときに姿勢を立て直すのもパワー側の能力である。
プロトコルは単純だ。週2回、普段より軽い重量で3セット6回。下ろすのに2秒かけ、挙げるのは1秒を超えない。重く挙げる日とは目的が違うので、同じセッションに混ぜるより別枠に置くほうがいい。
種目はどう変えるか
結合組織の弾性が落ちると、バーベルが関節の軌道を固定する性質が不利に働く。バーベルプレスをダンベルプレスに替えるという話はここから来る。床から引くデッドリフトの股関節可動域が出ないならルーマニアンデッドリフトが代替になり、ベンチプレスで肩が気になるならフロアプレスが胸への刺激を保ちつつ肩の負担を下げる。オーバーヘッドプレスは多くのリフターで肩の可動域が足りないため、ランドマインプレスで腕の軌道を体幹の前に移す手がある。
60代のトレーナー Kirk Charles が強調するのは、むしろ地味な小種目のほうだ。バンドプルアパートを3セット15回で上背部をつくり、長期的に肩を守る。パロフプレスを左右3セット12〜15回で腰痛に備える。椅子に足を乗せたヒップブリッジを20〜30秒×5回保持してハムストリングスを使う。派手ではないが、けが予防とパフォーマンスで差が出るのはこちらだ。
複合種目を減らした分は、ボディビル式の単関節種目で埋める。カールのような種目は重い複合種目より回復が速く、週2回入れられる。その分だけ週の総ボリュームを保ちやすい。
回復もトレーニング項目として扱うべきだ。『Maximus Body』の著者 Bobby Maximus は、年を重ねてからはジムよりスパに行く回数のほうが多いと言う。実務的な比率はジム30分につき回復1時間 — フォームローラーや軽いヨガで埋める時間だ。
タンパク質は1食あたりどれだけか
Schoenfeld の推奨は1食あたり35〜40g。プロテインシェイク1杯、または肉110〜170g程度がこれにあたる。1日の総量ではなく食事単位で見るのが要点で、実際にはほとんどの人がこの線に届いていないというのが彼の観察だ。トレーニングは筋を分解し、タンパク質がなければ回復は最後まで進まない。
パワー・トレーニングは速く挙げることであって、制御なしに放り投げることではない。ボックスジャンプを入れるなら最大高より25cmほど低く設定するか、跳ぶ代わりにボックスから降りて着地を整えるボックスドロップに替えるほうが安全だ。関節に痛みがあるなら自己判断で強度を上げず、専門家と進度を決めること。
筋力スコアは年齢をどう扱うか
リフター向けの相対筋力スコアにはマスターズ補正が入っている。40〜44歳は1.02倍、50〜54歳は1.09倍、60〜64歳は1.20倍、70歳以上は1.35倍が掛かる。30代と同じビッグ3合計を保っていればスコアはむしろ上がるということだ。
これが実戦で効くのは基準点が変わるからだ。10年ごとに筋量が3〜8%減っていく流れのなかで、ビッグ3合計を維持すること自体がすでに純増である。絶対重量が去年と同じだからといって停滞と読まず、年齢補正の入ったスコアで推移を見るほうが自分のトレーニングを正確に評価できる。毎月同じ条件で記録しておけば、その曲線が実際どこへ向かっているかが見える。
サルコペニアそのものへの運動処方はサルコペニアとレジスタンストレーニングで詳しく扱った。
よくある質問
50代以降も重い重量を扱っていいか?
いい。加齢で先に落ちるのは最大筋力ではなく作業容量と回復能力だ。重量を下げるより、1セッション45分またはワーキングセット12セットといった上限を決めて総量を管理するほうが理にかなっている。
サルコペニアは何歳から始まるか?
30代からだ。サルコペニアは30代以降、10年ごとに骨格筋量の3〜8%を奪う。レジスタンストレーニング、パワー・トレーニング、十分なタンパク質摂取で進行を遅らせられる。
パワー・トレーニングはどうやるのか?
普段より軽い重量で3セット6回を週2回。下ろすのに2秒かけ、挙げるのは1秒を超えないのが肝だ。同じ重量をどれだけ速く挙げられるかがパワーであり、筋力トレーニングだけではこの能力は別に育たない。
年配のリフターは1食あたりタンパク質をどれだけ摂るべきか?
1食あたり35〜40gが推奨される。プロテインシェイク1杯、または肉110〜170g程度だ。1日の総量より食事単位で分けて見ることが重要で、実際にはほとんどの人がこの基準に届いていない。
年を取ると筋力スコアは必ず下がるのか?
下がらない。マスターズ補正により40〜44歳で1.02倍、50〜54歳で1.09倍、60〜64歳で1.20倍、70歳以上で1.35倍が適用される。ビッグ3合計を維持するだけでもスコアは上がる。
出典: Men's Health