移植前の呼吸筋トレーニングが呼吸筋力と6分間歩行距離を伸ばした
要点
同種造血幹細胞移植を受ける成人を対象としたランダム化比較試験10件(参加者537人、完了405人)をまとめた結果、移植前の吸気筋・呼吸トレーニングは呼吸筋力と6分間歩行距離を改善し、入院期間中の監督付き複合運動は標準治療と比べて有酸素能力と筋力の低下を和らげた。ただし試験の70%が高いバイアスリスクと判定され、エビデンスの確実性は低〜非常に低いため、結論は確定ではなく仮説の水準にとどまる。
呼吸筋を別に鍛えるという発想はジムではあまり扱われない。ところが機能低下が確実に予定されている状況で何を先に鍛えておけば損失が減るのかを見た研究は、その答えとして呼吸筋を挙げることが多い。
今回のシステマティックレビューは、同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)を受ける成人のリハビリを扱ったランダム化比較試験10件を集めた。参加者は537人、プログラムを完了したのは405人だった。介入は時期によって3種類に分かれる。
- 移植前 — 呼吸理学療法、吸気筋トレーニング
- 移植前後の入院期 — 監督付き複合運動、全身振動
- 移植後 — 監督付きと在宅運動の組み合わせ、振動併用プログラム
実際に改善したのは何か
移植前の吸気筋・呼吸トレーニングは、小規模試験で呼吸筋力と6分間歩行距離を改善した。肺活量などのスパイロメトリー指標への効果は一定しなかった。入院期間中の監督付き複合運動は標準治療と比べて有酸素能力と筋力の低下を和らげ、疲労や生活の質への効果は試験ごとにばらついた。
移植後のプログラムは、監督付きと在宅を混ぜた形の実行可能性と安全性を確認したが、移動能力・疲労・生活の質の改善幅は小さく、アドヒアランスに大きく依存していた。
エビデンスの重さを正確に見る必要がある。含まれた試験の70%が高いバイアスリスクと判定され、GRADEの確実性は低〜非常に低かった。とくに全身振動と患者報告アウトカムでそうだ。死亡率や移植片対宿主病といった硬いアウトカムを検証できる規模の試験はひとつもなく、55歳を超える患者の代表性も不足していた。著者ら自身がこの結果を確定ではなく仮説生成の水準として読むよう記している。
リフターに持ち帰れる部分
この数値をジムにそのまま移すことはできない。移せるのは構造だ。第一に、損失が予定されているなら、損失の前に鍛える方が後から取り戻すより有利だ。手術、長期出張、怪我による強制休養のようにトレーニングが途切れると分かっている時点があるなら、その前に積んだ能力が着地点の底を上げる。
第二に、監督付きのプログラムと自力のプログラムの差はアドヒアランスに出る。このレビューで移植後の在宅プログラムの効果がアドヒアランス次第だったという箇所は、ジムでもそのまま繰り返される。監督がなくなったとき何から崩れるかは監督が終わると何が消えるかで扱った。
吸気筋トレーニングはリフティングにも役立つのか
直接の根拠はこの研究ではなく別の文献の担当だ。ただし重いスクワットやデッドリフトで腹腔内圧を作る作業は横隔膜を含む呼吸筋の仕事であり、ベルトを押し返すブレーシングも同じ筋肉を使う。呼吸筋が弱ければセット後半でブレーシングから先に緩む。器具も要らず、吸気抵抗デバイスを買う前に無負荷の呼吸ドリルから始められる。
ただしこれは補助種目であってビッグ3の代わりではない。相対筋力スコアはスクワット・ベンチプレス・デッドリフトの1RMから計算され、呼吸筋トレーニングの価値はその3種目でポジションを保てる時間にある。今の位置は計算機で確認できる。
よくある質問
移植前の呼吸筋トレーニングにはどんな効果があったのか?
ランダム化比較試験10件を集めたシステマティックレビューで、移植前の吸気筋・呼吸トレーニングは小規模試験を基準に呼吸筋力と6分間歩行距離を改善した。肺活量などのスパイロメトリー指標への効果は一定しなかった。
入院中の運動は役に立つのか?
このレビューでは、入院期間中の監督付き複合運動が標準治療と比べて有酸素能力と筋力の低下を和らげた。ただし疲労や生活の質への効果は試験ごとに一定しなかった。
この結果はどこまで信頼できるのか?
限定的だ。含まれた試験の70%が高いバイアスリスクと判定され、GRADEの確実性は低〜非常に低かった。死亡率や移植片対宿主病といったアウトカムを検証できる規模の試験もなかった。
呼吸筋トレーニングはリフティングに役立つのか?
この研究は直接答えていない。ただし重いスクワットやデッドリフトで腹腔内圧を作るブレーシングは横隔膜を含む呼吸筋の仕事なので、呼吸筋が弱ければセット後半でブレーシングから先に緩む。補助種目として扱うのが妥当だ。
出典: PubMed