原因を治療したら左室肥大が54.2%で戻った — 1454人のコホート
要点
原発性アルドステロン症の患者1454人(スペイン・イタリア・ドイツの36施設、平均51歳)で、治療前の左室肥大の有病率は49.4%だった。副腎摘出術またはミネラルコルチコイド受容体拮抗薬で原因を治療し、中央値51か月追跡した473人のうち54.2%で左室肥大が退縮し、手術群61.9%に対し薬物群48.6%と手術側が高かった(p=0.043)。両群とも左室心筋重量係数が有意に低下しており、病的に厚くなった心筋は固定した損傷ではなく、負荷が消えれば縮む構造だといえる。ただし治療前の血圧とアルドステロン値が高いほど退縮の確率は低かった。
まず数字から。スペイン・イタリア・ドイツの36の紹介施設から集めた原発性アルドステロン症患者1454人(平均51歳、男性58.7%)のうち、治療前に左室肥大があったのは49.4%である。半数だ。そして治療後に心エコーを撮り直した473人では、中央値51か月後に左室肥大が退縮した割合が54.2%だった。
原発性アルドステロン症は、副腎からアルドステロンが過剰に分泌されて起こる二次性高血圧である。血圧そのものが病気なのではなく、血圧を上げる原因が別にある状態だ。この研究が扱うのは、その原因を取り除いたときに、すでに厚くなった心臓の壁がどうなるかである。
厚くなった心筋はなぜ再び薄くなるのか?
心筋が厚くなるのは傷跡ではなく負荷への適応だからだ。圧負荷とアルドステロンというホルモン刺激が続くあいだ心臓は壁を厚く保ち、その刺激が消えれば重量は減る方向へ戻る。この研究で副腎を摘出した側と薬で受容体を遮断した側のいずれでも左室心筋重量係数が有意に低下したことがその根拠である。
この区別は、運動で大きくなった心臓と病気で大きくなった心臓が分子レベルから違うという話と同じ軸にある。詳しくは運動で大きくなった心臓と病んだ心臓の違いにまとめてある。
ではなぜ半数近くは戻らなかったのか?
退縮しなかった側を分けた変数は治療法ではなく治療を始めた時点の状態だった。治療前の血圧が高いほど、アルドステロン値が高いほど退縮の可能性は低く、この関係は手術でも薬物でも同じだった。逆に生化学的に完全に是正された患者で、左室心筋重量係数の低下幅が最も大きかった。
つまり戻せる窓があり、その窓は負荷が長く強くかかるほど狭くなる。高血圧患者の36.6%がすでに左室肥大だというメタ解析は高血圧と心臓の壁の厚さにあり、今回のデータはその後に何が可能かを埋めてくれる。
リフターにとってこのデータの意味は何か?
重いものを挙げる人は、心臓の壁の厚さをトレーニングの結果として解釈しやすい。しかしこの研究が示すのは逆方向だ — 壁が厚くなる原因のなかにはトレーニングと無関係な治療対象があり、それは戻せる。とくに若いのに血圧が高い、複数の薬を使っても下がらない、低カリウム血症を伴う、といった場合は原因を探す検査が別に存在する領域である。
- 血圧の数値はトレーニング記録と同じ頻度で見る — リフティング自体が急性に血圧を大きく上げるので、まずは安静時血圧が管理範囲かどうかだ。
- 下がらない高血圧は原因検査の領域だ — 薬を増やしても下がらない高血圧は、用量の問題ではなく原因の問題である可能性がある。
- 診断が遅れるほど戻る幅は小さくなる — 治療前の血圧とホルモン値が高いほど退縮の確率は低かった。
- 運動は引き続き必要だ — すべての運動様式が血圧を下げたというネットワークメタ解析は血圧を下げる運動の処方にある。
このデータは原発性アルドステロン症と診断された患者を対象とした後ろ向きコホートであり、一般的な本態性高血圧や運動による心臓の適応にそのまま当てはまるものではない。心電図や心エコーで左室肥大を指摘された場合は、自己判断ではなく診療の領域である。
よくある質問
左室肥大は戻せるのか?
原因が取り除かれれば多くで戻る。原発性アルドステロン症の患者473人を中央値51か月追跡した結果、54.2%で左室肥大が退縮し、左室心筋重量係数も有意に低下した。
原発性アルドステロン症とは何か?
副腎からアルドステロンが過剰に分泌されて血圧が上がる二次性高血圧である。血圧自体が病気なのではなく、血圧を上げる原因が別にあるため、副腎摘出術やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬でその原因を狙って治療する。
手術と薬物のどちらがよく戻すのか?
このコホートでは副腎摘出術61.9%、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬48.6%と手術側の退縮率が高かった(p=0.043)。ただし左室心筋重量係数は両方の方法で有意に低下している。
なぜ戻らない患者がいるのか?
治療前の血圧とアルドステロン値が高いほど退縮の可能性が低く、この関係は手術でも薬物でも同じだった。逆に生化学的に完全に是正された患者で左室心筋重量係数の低下幅が最も大きかった。
運動で大きくなった心臓も同じ問題か?
違う。この研究はホルモンと圧負荷で生じた病的肥大を扱っており、運動による心臓の適応とは発生機序が区別される。ただし心電図や心エコーで左室肥大が指摘されたときに両者を見分けるのは、画像と臨床情報を併せて見るべき問題だ。
出典: PubMed