スクワットのスティッキングポイントは下降局面で決まる
要点
レジスタンストレーニング経験のある男子大学生30名が、1RMフリーウェイトスクワットと、スティッキング領域内で姿勢を一致させた最大等尺性スクワットを行った。同じ姿勢にもかかわらず、1RMスクワットの方が垂直地面反力、股関節・膝関節の伸展トルク、足関節の底屈トルク、そして内側広筋・前脛骨筋・腓腹筋の筋活動がいずれも有意に大きかった。著者らはこの差を直前の伸張性(下降)局面の寄与と解釈し、スティッキング領域の強化には伸張性局面を活用する戦略が有効でありうると結論づけた。
1RMスクワットでバーベルが最も止まりやすい中間区間 — スティッキングポイント — で、実際のスクワットは同じ姿勢から押すだけの最大等尺性スクワットより大きな力を出した。経験者30名を測定した結果だ。二つの条件の唯一の違いは、直前に下降動作があったかどうかである。
スティッキングポイントはなぜ生じるのか?
スティッキングポイントは、ボトムから立ち上がる途中で力の出力と関節トルクが急激に落ちる区間だ。この区間で耐えられる重量が、事実上そのリフトの限界を決める。本研究もフリーウェイトスクワットにおけるこの区間の明確な出力低下を改めて確認した。
何をどう比較したのか?
経験のある男子大学生30名が、1RMフリーウェイトスクワットと、スティッキング領域内の複数の高さで姿勢を一致させた最大等尺性スクワットを行った。3次元モーションキャプチャ、フォースプレート、表面筋電図(sEMG)を同時に記録し、同じ位置での出力を直接比較した。
結果は一方向に揃った。1RMスクワットの方が垂直地面反力、股関節・膝関節の伸展トルク、足関節の底屈トルクのいずれも有意に大きく、内側広筋・前脛骨筋・腓腹筋(内側・外側)の筋活動も高かった。静止状態から全力で押すより、下降してから切り返す実際のスクワットの方が、同じ位置でより多くの出力を引き出したのである。
下降動作はなぜ力を足すのか?
著者らはこの差を、直前の伸張性(下降)局面が課す追加の力学的負担が関節トルクと筋活動を引き上げた結果と解釈している。下降はレップの休憩部分ではなく、最も弱い区間を通過する出力を事前に装填する区間だということだ。
したがって著者らの提案も伸張性局面を重視する戦略である。緊張を保ったまま下降をコントロールすることから、伸張性オーバーロードのように下降自体に負荷を加える方法までがこれに当たる。逆に伸張性局面を取り除いたトレーニングは、この寄与を手放す選択になる。
1RM挑戦で何が変わるか
マッスルインデックスに載るスクワット1RMは、多くの場合この区間で成否が分かれる。下降のコントロールの仕方そのものがスティッキング領域の出力に関わる、というのが今回の測定の要点だ。スティッキングポイントで失敗を繰り返しているなら、最も弱いリフトの鍛え方と併せて、自分の下降局面から点検する価値がある。
対象は経験のある男子大学生30名、種目はスクワットのみである。動的スクワットと等尺性スクワットの比較から導かれた解釈であり、テンポスクワットやポーズスクワットといった特定のトレーニング法の効果を直接検証した研究ではない。
よくある質問
スクワットのスティッキングポイントとは何か?
ボトムから立ち上がる途中で力の出力と関節トルクが大きく落ち、バーベルが止まりやすい中間区間のことだ。この区間で耐えられる重量が、事実上スクワットの1RMを決める。
なぜ実際のスクワットの方が同じ姿勢の等尺性より力が大きかったのか?
直前に下降する伸張性局面があったからだ。経験者30名の測定で、1RMスクワットは姿勢を一致させた最大等尺性スクワットより垂直地面反力、股関節・膝関節の伸展トルク、筋活動がいずれも有意に大きかった。
スティッキングポイントを突破するにはどう鍛えればよいか?
著者らは伸張性(下降)局面を重視する戦略を提案している。緊張を保って下降をコントロールすること、伸張性オーバーロードのように下降に負荷を加える方法がこれに当たる。
ポーズスクワットはやらない方がよいのか?
本研究がポーズスクワットを検証したわけではない。ただしボトムで止まるほど下降局面の寄与は薄れるという原理を示しているので、ポーズスクワットはその助けなしで立ち上がる能力を別途鍛える手段と理解すればよい。
ベンチプレスやデッドリフトにも当てはまるか?
本研究が測定したのはスクワットだけだ。ベンチプレスにもスティッキング領域はあるが、同じ規模の伸張性の寄与があるかはこのデータからは答えられない。
出典: PubMed