研究

3年間踊った高齢者は認知と歩行が改善したが、脚の筋肉はより減った

要点

平均74.2歳の高齢者102人(ダンス群74人、対照群28人)を最大3年追跡した結果、週1回のヒップホップダンス群はMMSEが年0.58点(P=0.007)、歩行速度が年0.065m/s(P=0.031)有利に変化した。しかし同じ群で骨格筋量指数は年0.064kg/m²(P=0.020)、脚の除脂肪量は左0.108kg・右0.088kgずつより多く減少した。楽しい律動的運動は脳と歩行を守ったが筋量は守れず、著者らはレジスタンストレーニングと十分なタンパク質摂取の併用が必要だと結論づけている。

「楽しく体を動かせばそれで十分」がどこまで正しいのかを3年分のデータで確かめた研究だ。答えは半分だけ正しい — 脳と歩行は守られ、脚の筋肉は守られなかった

対象は日本の6地域に住む平均74.2歳の高齢者102人(93%が女性)。ダンス群74人は週1回のヒップホップダンス教室に参加し高齢者向け大会にも出場、対照群28人は普段どおりの生活を続けた。追跡期間は最大3年、完全なデータが得られたのは59人である。

認知と歩行では明確に上回った

群×時間の交互作用が有意にダンス群有利となった項目は認知から出た。MMSEが年0.58点(P=0.007)、MoCAの視空間項目が年0.27点(P=0.023)の差である。

歩行では変化の中身が興味深い。歩行速度は年0.065m/s速くなったが(P=0.031)、歩幅は変わらなかった(P=0.243)。代わりに左足の接地時間が年0.018秒短くなった(P=0.005)。つまり歩幅を伸ばして速くなったのではなく、足が地面についている時間を減らして速くなったのだ。著者らはこれをリズムに基づく運動学習の結果と解釈している。

局所の筋力とバランスでも改善が出た。右股関節外転筋力が年1.22kg(P=0.016)、右片脚立位時間が年10.3秒(P=0.026)向上している。

ところが筋量は対照群より速く減った

ここで結果が反転する。ダンス群は骨格筋量指数(SMI)が年0.064kg/m²多く減少し(P=0.020)、脚の除脂肪量は左が年0.108kg(P<0.001)、右が年0.088kg(P=0.004)多く減った。BMIは両群とも変化しなかった(P=0.949)。

体重は変わらないのに脚の除脂肪量だけ減った、という組み合わせが重要だ。体重計の上では何も起きていないように見える。実際には同じ体重の内側で筋肉が別のものに置き換わっていたわけで、これは体重の記録だけでは決して捉えられない変化である。

観察研究であり無作為割付ではない。ダンスに参加する人としない人のあいだにもともと差があった可能性は排除できず、完全なデータを持つのは59人だ。ただし著者らの結論自体は控えめではない — ダンス参加だけでは加齢に伴う筋喪失を防ぐには不十分であり、レジスタンストレーニングと十分なタンパク質摂取を併せる必要があるというものだ。

リフターが持ち帰るもの

これはダンスや有酸素運動を貶めるデータではない。むしろ運動の種類ごとに守ってくれるものが違うという事実を3年分の数字で示している。リズムのある全身活動は認知と歩行制御を守った。筋量はその一覧になかった。

実際の適用は単純だ。週1回のダンスやクラス形式の運動をしているなら、それをレジスタンストレーニングの代わりではなく追加として置く。筋量を守る刺激は別に入れる必要があり、その処方はサルコペニアに必要な運動50歳以降も強く鍛えるにまとめてある。

記録の面では、この研究がマッスルインデックスの存在意義をそのまま突いている。体重は3年間なんの信号も出さなかった。一方でビッグ3の1RMは脚の除脂肪量が落ちれば正直に下がる。40代以降のコンディションを管理する人にとって、体重計よりスクワットとデッドリフトの記録のほうがはるかに感度の高い早期警告だ — マッスルインデックスに年齢補正が入っている理由も同じところにある。

よくある質問

ダンスは高齢者の認知機能に役立つか?

この研究ではそうだった。日本の6地域の高齢者102人を最大3年追跡した結果、週1回のヒップホップダンス群は対照群に比べMMSEが年0.58点(P=0.007)、MoCAの視空間項目が年0.27点(P=0.023)有利に変化した。

ダンスだけで筋量は維持できるか?

できなかった。同じ研究でダンス群は骨格筋量指数が年0.064kg/m²(P=0.020)、脚の除脂肪量が左0.108kg・右0.088kgずつ対照群より多く減少した。著者らはレジスタンストレーニングと十分なタンパク質摂取の併用が必要だと結論づけている。

ダンスで歩行速度が速くなったのはなぜか?

歩幅ではなく時間要素が変わったからだ。歩行速度は年0.065m/s速くなったが歩幅は変わらず(P=0.243)、代わりに左足の接地時間が年0.018秒短くなった。著者らはリズムに基づく運動学習による接地時間とケイデンスの改善と見ている。

体重が変わらなければ筋肉は維持されているのか?

そうとは限らない。この研究ではBMIが両群とも変化しなかった(P=0.949)一方で、脚の除脂肪量はダンス群でより速く減った。同じ体重のなかで組成は変わりうるため、筋力の記録や体組成で別に確認する必要がある。

では高齢者はダンスをやめてウエイトだけやるべきか?

そうではない。認知、歩行速度、片脚立位、股関節外転筋力はいずれもダンス群で改善した。筋量だけがその一覧になかったのだから、ダンスをレジスタンストレーニングの代わりではなく追加として置くのがこのデータに合う解釈だ。

出典: PubMed

自分の筋力スコアを計算する

ビッグ3の記録と体重を入れるだけで、年齢と身長を補正した相対筋力スコアが出ます。登録不要・無料。