BMIでは筋減少性肥満は見えない — 同じ体重でも予後は分かれる
要点
BMIだけでは筋減少性肥満、異所性脂肪、筋肉内への脂肪浸潤(myosteatosis)を区別できないが、予後を分けるのはまさにこの三つだ。がん医療の最新のフレームワークは、病期判定のためにすでに撮影したCT画像をそのまま読んで体組成を判定すれば、BMIでは得られない予後情報が手に入ると整理する。治療の軸は栄養と構造化された運動、その中心はレジスタンストレーニングであり、目標は時期ごとに変わる — 治療前は除脂肪量を増やし、治療中は守り、回復期に入って初めて脂肪量を減らす。
出発点は単純だ。体重と身長だけで計算したBMIは、リスクの正体を指し示せない。同じBMI30でも、筋肉が残っている人と、筋肉が落ちた上で脂肪だけ増えた人では、治療への耐えかたも回復の結果も違う。とくに脂肪が多く筋肉が少ない筋減少性肥満は、体重計には決して現れない。そこに本来の場所以外に溜まる異所性脂肪と、筋組織そのものに脂肪が入り込むmyosteatosisが重なると、体重が同じでも中身はまったく別のものになる。
では何を見ればよいのか?
新しい機器が要らないのが、このフレームワークの実用的なところだ。がん患者は病期を決めるためにすでにCTを撮っている。その画像の決められた断面で筋肉面積と脂肪面積を読み取れば、追加撮影なしで体組成の情報が得られる。国際的な合意文書も、肥満を本人の意志の問題ではなく慢性かつ再発する疾患として位置づける方向に移り、体重をめぐって人を責めない伝え方そのものを治療の構成要素と見なしている。
レジスタンストレーニングはどの時期に入るのか?
- 治療前 — 除脂肪量をできるだけ積み上げておく時期。手術や化学療法の前に確保した筋肉が、そのまま耐える余力になる。
- 治療中 — 増やす時期ではなく守る時期。目標は維持であって記録更新ではない。
- 回復期 — ここで初めて脂肪量の減少が目標になる。
- 緩和の段階 — 悪液質(カヘキシア)の予防が目標になる。
順序を逆にすると損が大きい。治療中に体重を落とそうとして筋肉まで一緒に失うのが、いちばんよくある失敗だ。使える手段は栄養戦略、構造化された運動、行動・心理的サポート、GLP-1受容体作動薬、代謝・肥満外科手術まで広く、このうち肥満外科手術はがんの発生率と死亡率の大幅な低下と関連すると報告されている。ただしどれを使っても、筋肉に直接刺激を入れられるのはレジスタンストレーニングだけという構造は変わらない。
リフターは何を持ち帰ればよいのか?
この論理は病気の人だけの話ではない。筋力指数は体重を補正するが、その体重が筋肉なのか脂肪なのかは知らない。代わりにビッグ3の記録がその役目を果たす — 体重が変わらないのにスクワットとデッドリフトが維持されるか伸びているなら、減ったのは脂肪だという実用的なサインだ。体脂肪率の数字が信じきれないときは、記録を指標に使えばいい。バルクとカットも結局は時期ごとに目標を切り替える同じ構造で、増やすときと絞るときで基準を分け、計算機で同じ体重のまま指数がどう動くかを見ればいい。
がん治療中の運動は自己判断で始める領域ではない。強度と時期は主治医のチームと決めるべきで、この記事はその会話に必要な概念を整理したものだ。
よくある質問
筋減少性肥満とは何か?
脂肪量が多く筋肉量が少ない状態を指す。体重やBMIは正常範囲に見えることがあり体重計では見つからないため、体組成測定やCT画像の読影で確認する。
なぜBMIは予後を説明できないのか?
BMIは体重と身長しか使わないため、筋肉と脂肪の比率も、脂肪が付いた場所も区別できない。同じBMIでも筋減少性肥満や筋肉内の脂肪浸潤の有無で、治療への耐えかたと結果が変わる。
治療中に体重を落としてよいか?
このフレームワークは時期を分ける。治療中の目標は除脂肪量の維持で、脂肪量の減少は回復期の目標だ。治療中の減量は筋肉の喪失を伴いやすい。
なぜレジスタンストレーニングが中心なのか?
除脂肪量を増やす、あるいは守る手段のうち、筋肉に直接刺激を与えられるのはレジスタンストレーニングだけだからだ。栄養戦略や薬はそれを支えるが、刺激そのものの代わりにはならない。
健康な人はBMIの代わりに何を見ればよいか?
体組成測定に筋力の記録を組み合わせればよい。体重が横ばいのままスクワット・ベンチプレス・デッドリフトの記録が維持または向上していれば、筋肉が保たれている実用的なサインだ。
出典: PubMed